必読、川崎泰雅の軌跡と告白。【中編】 ~リコタイ番記者、最後のインタビュー~

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転機となった大一番・早稲田戦

 

チームは開幕戦でこそ強豪明治にサヨナラ勝ちを収めたものの、6戦を終えて3勝3敗と戦績は振るわず。立教に変化が訪れたのは、川崎がイギリス・ロンドンへ教育プログラムに出発した8月下旬だった。
「早稲田との2試合目をPlayer!で見てて、『あれっ、勝ってんじゃん!』ってなりました。3連覇中の早稲田に勝てるなんて夢にも思ってなかったので、この1勝で『今年は勝てるチームなのかな』って思い始めるようになりました」。
3週間の研修を終えて日本へ帰ってくると、「びっくりするくらいチームの結束がすごいことになってて!(負田)圭亮は『優勝するぞ』とまで言い始めていて、でも三連覇中の早稲田に勝てるなら狙えなくはないなって思いました」。
負田の言葉通り、その後チームは破竹の快進撃。接戦をものにする勝負強さで優勝戦線に顔を出し始めた。そして迎えた10月10日の立教ー早稲田3回戦。2位と3位の直接対決であり、負けたチームの自力優勝が消滅するという正真正銘の大一番だった。

「この試合はもう…ほんっとに忘れられないです」。
昨日の夜の出来事かのように、鮮明な記憶をたどりながら川崎は笑みを浮かべた。

  

この日は南智樹との公式戦初対戦でもあった

 

「(投手力のいい)早稲田に勝つにはとにかく少ないチャンスをものにするしかないって思っていた」と振り返る川崎は、この試合から明確に自分の脚をチームの勝利のための手段として利用するようになる。
「(3盗塁したこの試合は)初球とかでは全然盗塁してないんですよ。2年の時とかは全然そういうことはやってなかったんですけど、ピッチャーの癖とか配球とかを見てからって感じで。2打席目はセーフティバントで出塁したんですけど、初見の左投手だったのでマズいと思って走りませんでした。昔だったらそんなこと考えずに走ってたと思いますね」。

“間違いなくこの試合は大学野球で一番嬉しかった試合”と試合直後のインタビューでは表現していたが、面白いのはこの試合で川崎は決定的な活躍をしたわけではないということだ。早稲田のエース・南智樹(米子東)の前に試合終盤の好機で三振を喫しており、本来ならば悔しさが先に来るはず。”自己中”ではなく、チームの勝利を欲する献身的な男の姿がそこにはあった。