悪夢の9回ウラ… 明治に再び訪れた悲劇 | ZETT杯2019 明治×法政
◇明治2-3法政
8日・八王子上柚木公園野球場
悲劇は再び起きた。
4月21日、春の陽気に包まれた上柚木球場で行われた明治のリーグ開幕戦。6-6の同点で迎えた9回ウラ、マウンドには川上裕陽(甲南)が立っていた。ルーキー左腕は初登板ながらも堂々としたピッチングを見せ、ランナーを三塁に置きながらも二死までこぎ着けた矢先だった。立教の9番・大野龍弥(杉並学院)に対して低めに投じたボールを捕手が止めきれず、まさかのサヨナラ負け。明治の2019シーズンはこうして始まった。
あれから8か月近くが経ち、迎えたZETT杯の初陣。負ければ即シーズン終了の一戦、同点で迎えた9回ウラのマウンドには川上が立っていた。2番手の中村貫太(明大中野)が四球で残したランナーがヒットとバントで進み、2死二、三塁。共にリコタイJAPANとして台湾遠征に臨んだ金山拓矢(獨協埼玉)とのサイン交換を終え、川上が渾身の力を込めて投じた初球はホームベースに当たり大きく跳ねた。
二度と見たくないと思ったシーズンの始まりの景色を、最終戦に再び見せるのだから野球の神様は少々趣味が悪い。 あの瞬間を振り返り、金山は自身のSNSアカウントで「最後のボールが跳ねてく景色と絶望感はどう頑張っても忘れられないよなあ」と心境を吐露した。
あまりにも濃い経験をしたルーキーバッテリー。ヤング・リコタイJAPANの台湾遠征でも全試合にキャッチャーとしてフル出場した金山は「1年生である自分を1年間使い続けてくれた3年生にはとにかく感謝しているし申し訳ない気持ちです。今シーズンはあと一歩で…というところで勝利や勝ち点を逃し、悔しい思いをたくさんしたので、来シーズンこそはリーグ戦もZETT杯も優勝できるようにレベルアップしたいと思います」と既にその目は来季を見据えていた。
川上が登板した時、明治の内野陣6人は全員が一年生となった。力のある若い選手たちを起用し続け、ZETT杯の舞台でも最後まで勝負に徹した明治の散り際は称賛されて然るべきだろう。引退を迎えた3年マネージャーの渡邊日南子は「来年からの期待が本当に大きいので、(リコタイ生活に)未練はないです」と、2017年以来となるZETT杯の栄冠を後輩たちに託した。
写真・文:小池颯