「今なら死んでもいい。」 苦しみ続けた163cmの小兵がドームで夢を叶えた瞬間。|東京ドーム 早稲田×立教

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「先発出場を告げられてからの緊張の仕方には自分でも驚きました」という。ベンチからその様子を見ていたあるマネージャーは、「お祭り感覚で周りが東京ドームに盛り上がっている中で、はじめがスタメン起用されてすごく緊張しているのは明らかに分かったし、なおさら応援したくなった」と振り返る。時間制限のある試合で、9番打者に巡ってくるチャンスはそう多くない。3回の攻撃、先頭の上原一将が出塁したところで「1打席目に懸けようと決意していた」小林が右バッターボックスに入った。 

 

写真:奥村日向子

 

「(先頭が出塁したので)ゲッツーだけは回避しようと。それと、数時間前に後輩の吉藤(夢来)に受けたアドバイスをしっかりと頭に入れて打席に入りました。3-1になって直球一本に絞れたところにイメージ通りの球が来たので無心で食らいつきました」と振り返る打球は、快音を残してライト前に落ちるクリーンヒット。数えきれないほどの配球をベンチから分析してきた小林からすれば、それは “来ると分かっていた球”だったのだろう。

苦しみ続けてきた男の一打に、1塁側の早稲田ベンチは大盛り上がり。「(みんなの歓声は)しっかりと耳に届いていました」と言う落ち着きぶりはさすが ”落合流” だが、やはり塁上ではこぼれる白い歯をまったく隠せていなかった。更にこのあと重盗を成功させてチャンスを広げ、2番・東宙成のセンター前ヒットで二塁から激走。間一髪でタッチをかいくぐり、早稲田に貴重な1点をもたらした。

「入学以来ずっと闘ってきた肩の痛みに加えて、実はここ1ヶ月ほど腰痛にも苦しんでいました。ただ、やはり東京ドームという晴れの舞台で選手としてグラウンドで何らかの結果を出したいと思い、かつてないほど念入りにストレッチなどのケアをして今日を迎えました」と明かしたその小さな体は、もはや満身創痍だった。

写真:小池颯

   

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