必読、川崎泰雅の軌跡と告白。【後編】 ~リコタイ番記者、最後のインタビュー~
チームがくれた一歩目の勇気
最上級生として迎えたシーズンでの盗塁に関する意識の変化について、川崎はこう振り返る。
「自分の好きにやらせてもらえて、チームのみんなからの信頼はすごく感じていました。自分に出るサインはグリーンライトしかないんですよ。『泰雅が走ってアウトになったら仕方ない』って思ってくれてる。それが”失敗してもいいんだ”っていう思い切りに繋がっていました。盗塁って一歩目を出すのにすごく勇気がいるんですけど、その勇気はチームのみんなからもらえていました。だから、自分の盗塁が、目的ではなくチームの勝利のための手段になっていたことがすごく嬉しいですね。」
特に感謝をしたいチームメイトの名前を訊くと、「それはやっぱり南斗です」と即答した。
「(2番打者として)自分のために打てたかもしれない球を見逃してくれるわけなので、本当にありがたかったです。」
シーズンの途中、赤崎が調子を落としていた時期に2番打者を変える案が浮上したことがあったという。その時に「2番は南斗のままにしてくれ」と強く要望したのはほかならぬ川崎だった。
結果的に打率は.241ながら、身長160cmの小柄な主将は打点王まであと2に迫る9打点を挙げた。「本当に良い1・2番コンビだったと思います」と川崎は誇らしげに語った。
野球人としての経験を将来へ
リコタイで過ごした濃密な時間を振り返り、川崎はこう語った。
「大学でもこうやって真剣に硬式野球を続ける環境があったことには本当に感謝したいですし、入学前は想像もできなかったです。高校の2年半はめっちゃ長く感じたんですけど、それに比べると、大学野球の3年はほんとに一瞬でした。それはやっぱり楽しかったからだと思いますし、自分自身としても納得のいく時間でした」
卒業後は教育に携わる道を歩む。「やっぱり自分のためではなく他者のために頑張ることの素晴らしさっていうか… 野球だったらチームメイトだし、自分の仕事だったら生徒。自分を犠牲にしてでも頑張りたい、っていうのが今の自分の軸になってます。また、最上級生になると後輩からの見られ方を気にしたりとか、『チームってこういうものなんだよ』っていうのを伝えるのも先輩として役目だなって感じるようになりました。後輩、もしくは生徒にこうなってほしいっていう姿を伝えるには、まず自分がそうならなきゃいけないんだと思います。」